Yotaの図書館4冊目は、長倉顕太著『GIGWORK(ギグワーク)』です!
概要
元編集者で、現在は出版プロデュースやコンサルタント、教育事業などを展開する著者が書く“ギグワーク”についての本です。
本書では、ギグワークを資本家でも労働者でもない新たな働き方として定義。
また、ギグワークをする人たちのことをギグワーカーと呼んでいます。
現代日本の抱える問題や日本人の固定観念に切り込み、それらを解決する手段(働き方)としてギグワークを語られています。
本書は3部から構成されています。主な内容は、下記の通りです。
第1部では、資本主義社会の変化を通して、新たに出現した『ギグワーカーとは何のか』。特に日本の教育を通して、今を生きる人たちはどのような考えに縛られてしまっているかを述べています。
第2部では、コンテンツ化する世界をテーマに、なぜギグワーカーが良いのか。
人生100年時代といわれるなかで、どのように生き方や働き方を決めれば良いのかが語られています。
第3部では、1部と2部を踏まえて、具体的な人生戦略について書かれています。
周りに流されず、不安定な将来を生き抜くには独自の戦略を取らなければなりません。
独自戦略を取るための具体的な道筋を述べています。
全3部を踏まえて、本書は“ギグワークという働き方をテーマに、これからの人生戦略を述べた本”といえるでしょう。
Yotaの感想
最初に、僕が本書を読んでネガティブに感じた点を述べさせてください。
とても興味深かった点や印象的な内容は後述します。
僕がネガティブに感じた点は2つあります。
- 口語的な文体
- 定義が曖昧な言葉
1つ目は『口語的な文体』です。
これは僕がネガティブに感じたというより、正確にいえばネガティブに感じる人がいるだろうなと思いました。
要するに“非常に好き嫌いが分かれるであろう語り口”です。
著者もまえがきにて「オレは口が悪いから、ある種の嫌悪感を抱くかもしれない」(本書95項より)と述べている通り、お世辞にも丁寧な語り口とはいえません。
しかし、その口語的な語り口ゆえに、本書は読書というより、著者との対話という印象を抱きます。
そのため、書かれている言葉に好き嫌いはありますが、読書が苦手な人には比較的読みやすい文章といえるのではないでしょうか。
あまりネガティブな点ではありませんでしたね( ̄▽ ̄;)
2つ目の『定義が曖昧な言葉』について述べていきます。
前提として、僕自身の読解力不足もあると思いますので、その点はご了承ください。
定義が曖昧だなと感じた言葉は2つです。
- ギグワーク
- コンテクスト
曖昧に感じた言葉の1つは、そもそものテーマである“ギグワーク”です。
本書では『資本家でも労働者でもない新たな働き方』や『どこでもいつでも誰とでも働ける』などと表現をされていますが、いまいちしっくりきません。
特に「資本家でも労働者でもない新たな働き方」は理解が及ばず、「つまりはどういうこと?」という疑問を拭えませんでした。
ネットで“ギグワーク”を調べてみると、単発契約でのアルバイトを指したり、フリーランスと同義で扱われたりと、定義はまちまちです。
ただ、調べたなかで共通していたのは“働きたい時に働きたいだけ働く”という言葉でした。
本書においても、前述のように『どこでもいつでも誰とでも働ける』働き方がギグワークと僕は解釈し、読み進めた次第です。
曖昧に感じた言葉の2つ目は、“コンテクスト”です。
著者はコンテクストの重要性を説いています。
現代ではコンテンツや商品の素晴らしさだけで売れる時代ではなく、コンテクストこそが重要だと。
しかし、そのコンテクストの定義が分かりません。
いえ、正確には“コンテクスト=人生”と本書では定義されているのですが、今ひとつ理解の及ばないところがありました。
本書で「インフルエンサーは日々のツイートでコンテクストを形成している」や「コンテクストを作ってからコンテンツを作った方が効率的」と書かれていますが、そもそもコンテクストとは何でしょうか。
これもネット検索してみました。
コンテクストは一般的に“文脈”と訳されるようです。
その他には“状況”や“背景”と訳されることもあるようでした。
ただ、コンテクストを文脈と読み替えても、本書の内容では違和感があります。
むしろ、背景という意味で理解した方が幾分しっくりくるかなと。
僕は読み進めるにあたって、コンテクストを“言葉の積み重ねからなる物語”と解釈しました。
ある人がコンテンツを発信する背景には、発信するに至った物語(理由)があるはずです。
そう考えると、コンテクスト=人生という定義にもしっくりきます。
著者は「コンテンツや商品の価値は専門家にしか分からない」と述べます。
商品の価値よりも、誰かを支援・応援することで、その物語の一員になることが大切だと。
上記を踏まえれば、“コンテクスト=人生”、つまりはその人のこれまでの物語を伝えることで、その後に生み出される商品やコンテンツはより多くの人に拡散されると理解できます。
というわけで、僕が曖昧に感じた言葉2つと僕なりの解釈を述べました。
僕の読解力が不足している点もあるかと思うので、ぜひ違う解釈をされた人がいらっしゃったら教えてください。
次は個人的に興味深かった内容や印象的な言葉を紹介します。
重要なのは「できること」であって「やりたいこと」ではない
本書で印象的な言葉の1つです。
著者は、大きな目標を持つ必要はないと述べます。
大きな目標を持ってしまうと、目標に沿った行動しかできなくなってしまうから。
加えて、変化の目まぐるしい現代において、目標通りに行くことは少ない。
目標に固執し動きを狭めるより、視野を広げて「できること」をやろうと書いています。
人のために、今の自分にできることをやる。
人の役に立てば感謝され、新たな仕事を紹介されるというループに入れると。
このループに入れば安定して仕事を得られるし、時には新たなチャレンジもできます。
新たなチャレンジをして、できることが増えれば、やりたいことも出てくるかもしれない。
いずれにしても、最初から大きな目標を立てたり、好きなことで生きていくと思うのではなく、まずは“人のために何ができるか”が大事だと著者は述べます。
「目標を立てよう!」や「好きなことで生きていこう」という発信が多い昨今において、逆をいく言葉だなと印象に残りました。
それと同時に、とても地に足のついた考えでもあると思った次第です。
「知らないこと」を知るために必要な3つのこと
先の印象的な言葉に付随する内容です。
著者は、目標を立てる前にまずは現在地を知ろうと述べます。
目的地を立てたとしても、現在地が分からなければどこに向かえば良いのか分からないからです。
その現在地を知るための方法として、以下の3つを著者はあげています。
- 読書する
- 新しい体験をする
- 文章を書く
では、目標に対しての現在地とは何でしょうか?
著者は現在地を“自己評価”と定義しました。
なぜ、自己評価を知らなければいけないのか。
その理由を以下のような例で語られています。
東大に入ることを目標とした場合、自分の学力によって戦略が変わるでしょう。
たとえば、英語のテストがいつも満点の人は、英語以外の教科に注力するなどのように。
ただし、大切なのはあくまでも“客観的な評価”であることです。
自分で英語はできると思っていても、他者から見ればその自己評価は勘違いかもしれません。
ここで大事なのは、能力の高低が問題ではなく、人によって取るべき戦略が違うということです。
先の学力の例でいえば、英語が得意な人はそれ以外の教科に注力するべきですし、英語が苦手な人は英語を勉強しなければなりません。
ここの評価を誤ると、客観的には英語の成績は良くないのに、自分では得意と勘違いして、適切な対策(戦略)を取れなくなってしまいます。
こうした勘違いをなくすために、他者からの評価が大切だと著者は述べています。
とはいえ、適切な評価をしてくれる人はそう多くはいません。
そのために、著者は冒頭で述べた下記3つの方法で、現在地を知ることを提唱しています。
- 読書する
- 新しい体験をする
- 文章を書く
3つともに通ずることは、“知らないことを知る”ということです。
読書や新しい体験はその通り、今まで知らなかった知識や経験を知ることといえます。
“文章を書く”は、一見知らないことを知るとは別物に感じますね。
ですが、著者は「書くという行為よりも書いたものを読むということに意味がある」と述べます。
書いたものを読む、すなわちこれは自分を客観視することだと。
そうしていくつもの知らないことを知ることで、自分はどのような人間なのかが分かり、自分の現在地を知ることができると本書では述べられています。
これは実際、僕自身の経験に照らし合わせても、その通りだなと感じることがありました。
僕も読書を通じて、自分が興味を抱く分野は何なのかを知り、加えて知らないことを知ることが好きという自分に気づきました。
また、2020年1月から副業でライターを始めて、自分は文章を書くことが好きと再認識しています。
これは新たな経験を通じた自分の理解ですよね。
そして、今こうしてブログで文章を書くことにより、自分の考えていることやどこに興味を抱くのかを知ることができています。
正直、自分を知ること=現在地を知ることで、やりたいことが見つかるのかは分かりません。
ただ、『重要なのは「できること」であって「やりたいこと」ではない』でも述べたように、できることは増えていくなと感じています。
いえ、正しくは自分を知ることで「これは自分でもできそうだな」と思える選択肢が増えることですね。
まずはやりたいことを探すよりも、できることを増やそうと思える印象的な内容でした。
まとめ
以上、長倉顕太著『GIGWORK(ギグワーク)』を読んだ感想を書きました。
目標を立てること、好きなことで生きていくことを述べる本は多いですが、本書のようにできることをやろう、と述べる本は少ないように感じます。
(僕が知らないだけかもしれませんが)
ですが、自分のできることを行い、人の役に立つことは、あらゆるビジネスに通ずることだと思いました。
目標から逆算していくのではなく、現在地から積み重ねていく。
起業や副業などの方法論が流行るなか、あらためて行動の大切さを思い知らされる内容でした。
以上、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。